剪定枝の堆肥化
剪定枝は微生物等の働きにより良質な有機執堆肥として活用することが出来ます。しかし、落ち葉等と異なり腐敗(堆肥化)するまでに長い期間が必要となり、活用まで長いサイクルがかかります。堆肥化して有効活用するためには、粉砕機によりチップ化し、副資材と混ぜ込み発酵を促すなどの手間が重要となります。
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枝は落ち葉等と同様に腐らせることで有機質堆肥土(腐葉土)として活用することが出来ます。
しかし、枝はそのまま集積して放置しても体積が大きく場所をとるだけでなく、発酵(分解)に数年単位での期間が必要となります。
このため、体積の圧縮。発酵斑の防止(均一な発酵)等に粉砕機によるチップ化を行うことが一般的です。
・粉砕機でチップ化することのメリット
枝を粉砕機によりチップ化することで次のメリットがあります。
・体積の圧縮
・均一な発酵(発酵ムラの防止)
・副資材との混合ムラの防止
・切り返し作業を容易となる
・早く腐らせる方法
チップ化した枝は、単に積み上げて放置しても発酵肥料として完成するまで長い期間が必要となります。発酵を早めるためには、微生物等が存分に活動できる温度、水分、空気が必要となります。
また、副資材を混合することで発酵を促進することができます。
・温度の管理
冬季では表面を覆うなどしないと温度が低下し、微生物活動が低下します。
冬季にはブルーシート等で被う。もみ殻や藁等で覆うことで保温を行います。
放置すると微生物の活動が低下し発酵温度が低下します。発酵温度が低下する前に切り返しを作業を行います。
・水分の管理
乾燥により堆肥が乾かないよう、積み上げて保管します。
また、水分が多すぎとならないよう、保管場所は適度に排水状況が良い場所に保管します。
・空気の管理
切り返し作業により積み上げた堆肥内部に適度に空気を取り込みます。
発酵温度が低下(60℃を下る)し始めたら切り替えすタイミングです。
剪定枝の堆肥作りでは、家畜の糞等による堆肥と比較して切り返しの頻度が少なく、切り返し作業は1~2か月に1回程度が目安です。
堆肥化への発酵過程前半において発酵温度が60℃以上の激しい発酵活動がある場合は、1~2週に1回程度が目安です。
・主な副資材
天然資材:牛糞、馬糞、鶏糞等の生堆肥
モミ殻、ワラ(米や麦ワラ)、ススキ等の雑草、
米ヌカ、油カス、おから(大豆のおから)
人工資材(化学肥料):尿素、石灰窒素
・副資材を使用した時の積み込み
チップ化した剪定枝を数10㎝の厚みに積み、副資材を均一に撒き、水撒く。
同様の手順を繰り返しサンドイッチ状に積み込みを行います。
・積み込み方法
木枠を利用して踏み固めてながら積み上げる方法と、木枠を利用せずに単純に積み上げる方法があります。
踏み固めることで積み込み状態が高密度状態(空気を余り含まない状態)となると発酵が遅くなります。
踏み固めるか否かは、チップの粒の大きさや形状。副資材の種類や状態で異なります。
踏み込みが有効の例:
稲わらやもみ殻では密度が低いため、踏み固めた積み込み方法が有効です。
踏み込みが不適切な例:
木の材質密度が高く、質量の大きいチップ。
形状の問題で積み上げると隙間を含み難いチップ。 など
・堆肥化までの期間
剪定枝の堆肥:副資材を使用、切り返しを実施て約6か月(適正管理下での目安)
稲わらの堆肥:副資材を使用、切り返しを実施て約4か月(適正管理下での目安)
もみ殻の堆肥:副資材を使用、切り返しを実施て約1年(適正管理下での目安)
堆肥化までの期間は、適正に管理した場合での目安期間です。
実際の使用では、副資材の使用や切り返しを適切に実施したかの管理状態を踏まえるとともに、状態(異臭の有無、水分過多、発酵熱の有無)を確認して使用してください。
・発酵が完了した状態の判断方法
・異臭がない
・水分過多によるベタつきがない
・発酵熱の発生を終え、その熱が取れている
発酵が不十分な状態での使用は、紋羽病の発生リスクがあります。
発酵堆肥を使用する際は、確実に発酵を終えていると判断するまで使用を控えることが重要です。
・枝等で作った堆肥(有機質堆肥)の成分表(目安)
種類 | 窒素(N) | リン酸(P) | カリ(K) | pH |
枝 | 1.5~3.0% | 0.1~2.0% | 0.4~1.0% | 7.2~7.6 |
稲わら | 0.4~1.0% | 0.2~0.5% | 0.4~1.0% | 7.2~7.6 |
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肥料を使用しての土作りについては、
梨の病気被害と対策>「農業の土づくり」にて紹介しています。